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最低賃金の引き上げ最大28円【2021年8月号】No.179 

浅岡会計事務所 insightreview

厚生労働省の審議会は2021年度の最低賃金(時給)引き上げ額の目安を全国平均で28円とすることを決めました。過去最大の上げ幅で、政府は景気や消費の回復につながると期待する一方で、コロナ禍で経営環境が悪化している中小企業などからは負担増を懸念する声が出ています。賃金の底上げには企業の生産性向上が欠かせず、政府は支援強化にも乗り出す予定です。

最低賃金は目安を基に、都道府県ごとに決めることになっています。目安通り改定されれば、全国平均は現在の902円から930円になります。政府は賃上げの一部が消費に回れば、経済が活性化すると見込んでおり、大手企業を中心とする春闘と並んで、最低賃金の引き上げを重視しています。これまでも、2016~2019年度には最低賃金の3%超の引き上げが実現し、2021年度も3.1%で、2014年度の780円と比べ2割近く上昇することになります。

しかし、世界的に見て日本の賃金の伸びは劣っています。働く人全体の賃金の総額を示す名目雇用者報酬は、2005年から2020年にかけて8%しか伸びていないのです。世界では、英国が6割増、米国は2019年までに6割増、韓国においては2018年までに2倍に達しており、主要国の中で、日本だけが取り残されている状況なのです。

一方、中小企業では、コロナ禍による売り上げ減少と賃金の負担増がダブルパンチになるとの懸念が高まっています。生産性が十分向上しないまま賃上げを行うと、逆に雇用悪化につながる恐れがあるからです。韓国では 2018~2019年で最低賃金が29%引き上げられました。一方、この間に1人あたりの労働生産性は4%しか増えなかったため、飲食店や小売店など自営業者の人件費が急増して、廃業や解雇が続出し、雇用悪化につながっています。このため、2020年以降は、引き上げ率を大幅に抑えることになっています。

日本でも人件費が増えれば、雇用情勢の悪化につながる恐れがあるため、政府は企業のデジタル化など生産性向上を後押しする考えです。とくに、最低賃金引き上げの影響を受ける中小企業向けに、新規事業への設備投資などを対象とする「事業再構築補助金」で高い補助率を適用するなど生産性向上を支援する予定です。また、人手不足の成長産業へ転職が進むよう、職業訓練の制度拡充も進めていくようです。

雇調金特例、年末までの延長検討

◆ 最低賃金引上げ受け企業負担下支え

政府は、雇用を維持する企業を支援する「雇用調整助成金」について、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた上限額引き上げなどの特例措置を今年末まで延長する方向で検討に入りました。現在の期限は9月末ですが、最低賃金(時給)の引き上げ額の目安が過去最大の28円となったことで、企業の人件費負担が増すことから、特例の延長で下支えするとのことです。
特例措置は、休業の場合、手当の助成金の1日あたり上限額を約8,300円から1万5,000円に引き上げています。また、中小企業向けの助成率も3分の2から最大10割としています。ただ、特例措置はこれまで何度も延長されており、10月以降の助成率は中小企業で最大9割などと縮小される可能性があります。政府は今後、別の助成金制度の拡充を組み合わせることなどを含め検討することになります。

 

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VOL.179

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