路線価が2年連続で上昇【2023年8月号】No.199
相続税や贈与税の算定基準となる2023年分の路線価(1月1日時点)が発表されました。全国約32万地点の標準宅地は、平均で前年比1.5%上昇しています。路線価の上昇は、2年連続となっており、新型コロナウイルスの影響が弱まり、観光地や繁華街を中心に人出や経済活動が戻ったことも起因して、2022年の上昇率を1ポイント上回っています。
新型コロナの感染症法上の分類が5類に移行する前の評価ではありますが、インバウンド(訪日外国人)客の増加も見込んで、上昇地点が広がっていると考えられます。地方都市でもにぎわいを取り戻しつつあり、コロナ禍からの回復傾向が鮮明になっている状況です。
都道府県庁所在地の最高路線価が前年に比べて上昇したのは29都市で、2022年から約2倍に増えています。2022年は5.8%マイナスと下落率が最大だった神戸市が2.0%プラスに転じたほか、下落が続いていた大阪市や奈良市などもプラスに転じています。
全国トップの路線価は38年連続で、東京都中央区銀座5の文具店「鳩居堂」前で、価格は1平方メートルあたり4,272万円です。前年を1.1%上回り、3年ぶりに上昇しています。
標準宅地の変動率を都道府県別にみると、25都道府県が上昇しており、前年より5県多くなっています。その中でも最も上昇したのは、北海道(6.8%プラス)で、札幌市内や近郊で住宅地の需要が伸びたほか、2030年度末の北海道新幹線延伸を見据えて、商業地などでも上昇地点が目立っています。逆に下落したのは20県で、和歌山県がマイナス1.2%で最も下落率が大きくなっています。
◆ 繁華街や観光地のにぎわいが路線価を引上げ
今回発表された路線価は、繁華街や観光地を中心に上昇が目立っています。
新型コロナウイルス禍で落ち込んだインバウンド(訪日外国人)が戻りつつあり回復傾向が浮き彫りになっていると考えられます。
また、東京都心の住宅価格の高騰や在宅勤務の定着などを背景に、郊外の住宅地も上昇が続いています。
関西屈指の繁華街でもある大阪・ミナミも回復の兆しが見えてきています。
中心部の戎橋周辺は2年連続で各税務署管内の最高路線価地点で下落率ワーストでしたが、2023年は下げ止まっています。コロナ時は閑散としていた道頓堀も、平日昼からたこ焼きなどを食べ歩く訪日客でにぎわっています。その他の主要な観光地でも、回復基調は顕著になっています。那覇市では、中心部の国際通り沿いにあるホテルの宿泊客が戻ってきており、2023年1~5月の客室稼働率は、2019年の同時期とほぼ同水準になったようです。今後は、中国と那覇を結ぶ直行の航空便再開で、さらに訪日客の増加が見込めるのではないかと見通しを掲げています。
コロナ禍で大きく打撃を受けた京都市では、国内客もかなり戻ってきているようです。2021年にマイナス8.7%に落ち込んだ京阪電鉄祇園四条駅周辺の路線価は、2023年に6.0%と上昇しました。清水寺に通じる三年坂では、以前のように修学旅行の生徒がひしめき合う状況にもなっているようです。紅葉シーズンに向けさらに観光客が増えると来年以降も、この路線価上昇傾向は継続されるのかもしれません。
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