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【2020年8月号】No.168 請求書の完全電子化に向け協議開始

浅岡会計事務所 insightreview

請求書の完全電子化に向け協議開始

仕様統一で、会計・税の作業負担減

企業間でやりとりする請求書の完全なデジタル化に向け、データ仕様を統一する取り組みが始まります。政府とソフトウエア企業など約50社が近く協議を開始し、2023年までに導入をめざします。非効率な作業が多いと競争力に響きます。これにより、会計や税に関する作業を効率化し生産性を高めることが狙いです。

日本のデジタル化は海外に比べて遅れています。電子商取引の利用率は経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国中で20位にとどまります。インド大手調査会社のザ・インサイトパートナーズによると、世界の電子請求書関連の市場は2019年で48億4千万ドル(約5千億円)ですが、日本では、約1億6千万ドルとなっています。

欧州連合(EU)は2008年に請求書や受発注などの電子取引文書の仕様を決めています。スウェーデンやデンマークなどは政府と企業間の請求書デジタル化を義務付け、イタリアは2019年に企業も含めてすべて義務化しています。

こうした状況下で、日本も対策に乗り出します。企業が製品やサービスの代金を求める際に出す請求書は通常、紙の書類の郵送やメールで請求先に届けています。これを受け取った企業は、自社のシステムの仕様に合わせてデータを入力し直しています。

仕様が同じメーカーのソフトを導入していないと請求書データは自動的に会計システムと連携していません。大企業では業界内で同じ仕様の活用が進むものの、電子で完結する取引先は2割程度とみられています。

2023年10月からはインボイス制度が始まり、特に中小企業の負担が高まる見通しです。今回、政府と民間会社で立ち上げた協議会には、会計ソフトでシェア1位の弥生や、「勘定奉行」などの会計システムを販売するオービック(OBC)など約10社が参加し、クラウドで書類をやりとりするサービスの米トレードシフトも加わり最終的に約50社の参加を見込んでいます。請求書データの入力・参照を各企業がクラウド上で進められるシステムを開発し、取引先への入金や領収書作成を自動的に進める機能も加えます。紙の保存を不要にする規制緩和はすでに実施されており、仕様の統一でデジタル化が進みそうです。中小向けには月数百円程度で使えるクラウドサービスも開発し、政府は導入費用の補助を検討しています。オンラインで可能な税務申告や、雇用保険、年金保険など行政向けの書類作成とも連動する予定です。協議会が年内にも共通仕様を固め、2022年秋から順次サービスを開始します。新型コロナウイルスの拡大を受け企業で在宅勤務の取り組みが広がっており、コロナ対策を進める上でもデジタル化の推進が急務となっています。

(参考資料:日本経済新聞2020.7.30より抜粋)

 

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