公示地価が公表、三大都市圏で下落【2021年4月号】No.175
先日発表された2021年1月1日時点の公示地価によると、東京・名古屋・大阪の三大都市圏の地価(全用途平均)が8年ぶりに下落しました。新型コロナウイルスの感染拡大で、飲食や物販の店舗閉鎖、オフィス縮小が進み、商業地を中心に地価が下がった一方で、リモートワークや巣ごもり消費の拡大などコロナで生じた生活の変化が大都市近郊の地価を押し上げた面もあるようです。前年比28%減と全国の商業地で最大の下落率となったのは大阪ミナミの繁華街、道頓堀1丁目。その他にも、商業地の地価変動率で下位1位から6位を大阪の繁華街が占めており、大阪圏の商業地は昨年前半が2.2%の下落、年後半も0.6%の下落となり、年後半にプラスとなった東京圏、名古屋圏と比べても勢いのなさが目立っています。外食や小売り、宿泊と旺盛だった不動産への需要がしぼんだことが、地価の大幅な下落につながっているようです。
一方、底堅く推移したのが札幌、仙台、広島、福岡の地方4市です。県庁所在市の商業地で6.6%上昇と全国最高の伸び率となった福岡市は、天神など中心部で20年代中ごろまで再開発の計画があるようです。住宅地では働き方の変化がプラスに寄与した地域もあります。テレワークの浸透で在宅の時間が増え、中古マンション需要が伸びるなど、住宅投資熱が高まった面があります。長野県軽井沢町や静岡県熱海市の住宅地では前年を上回る伸び率を記録した地点もあります。国土交通省によると、いずれも首都圏居住者のマンションや別荘の需要が地価上昇につながったとされています。
◆名古屋圏における不動産市場の動向
新型コロナウイルス禍で名古屋圏の公示地価が下落に転じているのは、上記の通りですが、半面、世界的な金融緩和を追い風とした海外マネーは中部の物流施設に照準を定めているようです。特に積極的なのは、米大手投資ファンドのブラックストーン・グループです。年金基金などを顧客とし、世界の不動産の運用資産は20兆円規模にのぼるそうです。海外マネーは、日本の不動産市場で、先進国の中では相対的に高い投資利回りが狙えるとして、名古屋にも物色の手を広げています。その中でも、リニア中央新幹線の整備などで都市化が進む名古屋圏のポテンシャルは高く評価されています。
中部3県(愛知、岐阜、三重)の2020年の不動産取引額は1886億円と2019年比で14%増え、2年連続で増加しています。東京都心5区(約1兆2千億円)や関西圏(約7700億円)と比べると規模は小さいものの、増加の度合いは両地区よりも目立っています。中でも物流施設は、ネット通販の増加を追い風に、投資家の視線が東京、大阪から名古屋へと広がっていることも要因のようです。中部圏の不動産取引額でみた「物流施設など」の比率は2018年の6%から2020年に44%に伸びています。マンション(31%)も含めると、2020年の両資産のシェアは4分の3に達しています。これまで売買対象の主役だったオフィスや商業施設から大きく入れ替わっています。入居需要が安定しており、利回りが狙える物流施設や住居に投資マネーが向かい、愛知県みよし市の物流施設向けの地点は5.3%も上昇しています。同地点は東名三好インターチェンジ(IC)に近く、その利便性の良さが価格を押し上げたようです。また、5月には名古屋第二環状自動車道、2026年度にも東海環状自動車道と2本の環状道路の全線開通を控え、交通網の発達とともに、物流施設に対するニーズは高まり、新規開発が相次いでいるようです。
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