遺産分割協議に期限、相続開始後10年まで【2023年5月号】No.196
2023年4月1日から施行
2021年4月に相続に関する民法改正がありましたが、この2023年4月1日から施行されたものがあります。それは、相続開始後10年が経つと、被相続人(亡くなった人)から一部の相続人だけが生前贈与や遺贈、死因贈与で受取った利益である特別受益や、相続財産の維持・増加への貢献度に応じて認められる相続分の増額分である寄与分について主張できなくなっています。
法律上、遺産分割協議には期限はない
実は、遺産分割協議には法律上の期限はありません。相続開始後何十年経っていても、遺産分割協議は可能です。
しかし、遺産分割がされないまま長期間が経つと、たとえば誰のものかわからない所有者不明土地が生まれてしまうおそれがあります。
土地を購入したい人がいても、誰から購入すればいいのかわからず、結果として、土地を活用できない、という事態にもつながります。
10年超で原則法定相続割合とする
こうした事態に対処するために、遺産分割協議に10年の期間を設定することとなったのです。相続開始から10年過ぎても、分割協議がまとまらなければ、原則として法定相続割合で分割することとなります。
法定相続割合は民法で定めた財産の分け方で、例えば相続人が配偶者と子1人なら2分の1ずつとなり、配偶者と子2人なら配偶者が2分の1、子は4分の1ずつとなっています。
亡くなった人の遺言がない場合には、相続人は話合いで「誰が、どの財産を、どれだけ引き継ぐか」を決めます。財産は法定相続分で分けてもいいし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる分け方でも構いませんが、分割協議は、具体的な分割方法を巡って相続人同士が対立し、まとまらないことが少なくありません。特に難航しやすいのが、相続人のなかに故人から生前に財産を贈与されていたり、介護などで故人に多大な貢献をしたりした人がいるケースです。
それぞれ「特別受益」と「寄与分」といいますが、分割協議がもめる要因になりやすいです。遺産を単純に法定相続割合で分けると、不公平になりかねないためです。
そのため、特別受益や寄与分を踏まえて決めるのが、より公平な分け方になりますが、生前贈与の内容の把握や寄与分の認定と金額の算定に手間取り、結果として、分割協議が長引くことになってしまいます。
この民法改正により。相続開始から10年過ぎた場合には、特別受益や寄与分を認めず、法定相続割合で分けるようにすることで、政府は所有者不明土地の発生に一定の歯止めをかけたい考えです。反面、相続人は希望しなくても法定相続分で分けることになってしまいます。
なお、この改正民法は、2023年4月1日以前に発生した相続にも適用されますが、施行日から5年以内に期限が来る場合は、猶予期間として施行日から5年以内であれば特別受益や寄与分を主張できる、とされています。
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